2025.04.07
加盟店とのシナジーで加速する、エリア経済圏の確立。JFRカードが目指す「地域共栄」の姿とは__。

取材・執筆:原田直子 編集:末吉陽子 撮影:田ノ岡宏明
名古屋・栄エリアでJFRカードがつむぐ「地域共栄」
――はじめに、地域共栄に対するJFRカードの考え方を教えてください。
JFRカード エリアマーケティング担当 飯塚晴彦(以下、飯塚):現・中期経営計画で最重点エリアと位置づける名古屋・栄。このエリアでは、JFRグループが共同事業者と手掛ける「ザ・ランドマーク名古屋栄」の建設や、松坂屋とパルコの大規模改装が着々と進行中です。しかし、これらが個々に魅力を放つだけでは、JFRグループが目指す「地域共栄」の姿とはいえません。グループの各商業施設をお客様が行き来し、さらに人の流れがエリア全体に波及する仕組みづくりが必要です。そのミッションを背負うべきは、私たちJFRカードだと考えています。
当社は2021年からグループ外の企業や店舗とも連携し、地域全体の価値向上と経済発展を目指す活動を展開しています。その鍵となるのが「QIRA(キラ)ポイント」です。
QIRAポイントとは、JFRカードで決済した際に付与されるポイントのことで、JFRグループの商業施設以外で決済しても付与されます。貯まったQIRAポイントは、モノやサービスと交換できたり、JFRグループの商業施設のポイントへ移行できたりするなど、カード会員に高い利便性をもたらします。
このQIRAポイントのロイヤリティを高めるために推し進めているのが、通常よりも多くのポイントが付与される「QIRAポイントプラス対象店」の開拓です。2025年3月現在、栄エリアのQIRAポイントプラス対象店は約100店舗となり、これはJFRグループが掲げる7つの重点エリア(札幌、東京、名古屋、京都、大阪、神戸、福岡)の中で最大規模を誇ります。
「新商業施設の建設や既存店舗の大型改装といったハード面の構築と並行して、エリア全体に人の流れを生み出すソフト面の取り組みが不可欠。その使命を担うのはJFRカードです」と力強く語る飯塚さん
――QIRAポイントプラス対象店の開拓は、なぜ地域共栄につながるのでしょうか。
JFRカード 加盟店開拓担当 佐藤祥太郎(以下、佐藤):JFRグループの商業施設だけでなく、周辺の様々な店舗でもお得にQIRAポイントが貯まるようになれば「顧客回遊」が活発になるからです。QIRAポイントプラス対象店には、当社のメールマガジンやアプリを介して自店の宣伝やキャンペーンのお知らせを発信していただき、JFRカードを利用しているお客様の買い回りを促進します。この仕組みを充実させることで、エリア全体の価値向上と経済発展に貢献できると考えています。
――栄エリアの新たなランドマークとして2024年4月にグランドオープンした中日ビルは、テナントの多くがQIRAポイントプラス対象店です。まずは、旧中日ビルとの違いを教えてください。
中部日本ビルディング 営業グループ グループ長 西山雄一朗(以下、西山):中日ビルは「多くの人たちが集い、憩い、楽しんでいただける先進の複合ビル」に生まれ変わりました。
旧中日ビルは半世紀超にわたり地域に愛されてきたビルであるがゆえ、顧客の高齢化という課題を抱えていました。意匠設計やテナントリーシングでは旧中日ビルのブランドバリューを継承しつつ、顧客層の若返りを目指し、「親子三世代」に楽しんでいただける施設にアップデートしました。
――QIRAポイントプラス対象店になった決め手は何でしょうか。
西山:決め手はやはり、JFRグループの商業施設、JFRカードの加盟店との「相互送客」が期待できる点です。栄の商業集積地は、中日ビルから見ると久屋大通公園をはさんだ向こう側になります。われわれは久屋大通りを“川”と呼んでいるのですが、中日ビル側に足を運んでいただくのは、広い川を渡っていただくほどハードルが高いんです。しかし、お客様に多くのメリットをもたらすQIRAポイントプラス対象店になれば、松坂屋やPARCOを訪れたお客様に「中日ビルにも行こう」と思っていただく動機が生まれます。
栄の新たなランドマークとして生まれ変わった中日ビル(左)の7階屋上広場から見渡す栄の街。久屋大通公園の向こうに松坂屋名古屋店、名古屋PARCOが並ぶ。
相互送客は、中日ビル建替えの基本構想段階から狙っていたことでした。松坂屋名古屋店をはじめとする名だたる商業施設が林立するエリアで商業施設を開発するにあたり、われわれはどうやって勝負するべきか検討を重ねました。
その結果、自店への来店促進だけでなく、そもそも栄エリアの来訪者の総数を増やし、買い回りの促進や滞留時間を長くすることが重要ではないかと考えたのです。ですから、JFRグループに対してライバルという意識はなく、まさに地域共栄の精神をもとに、JFRカードを介して仲間に加わったという意識でいます。
中日ビルの西山さんも「久屋大通りという“川”を越えて栄を回遊する動機を生み出し、エリアの価値を高めたい」と熱く語る
QIRAポイントが生み出す、新たな「エリア経済圏」
――地域共栄を目指す上で、JFRカードは具体的にどのような取り組みを進められたのでしょうか?
佐藤:まず、相互送客を図るために、JFRカードの顧客層と店舗様の顧客層のマッチが重要であると考え、松坂屋名古屋店の顧客層と合う店舗様を中心にお声がけをしました。
一方で、顧客視点に立つと、カードを利用できるお店の魅力、選択肢の多さが重要です。そのため、お客様に喜んでいただける店舗を精査し、業種に偏りが生まれないよう配慮しました。
その上で送客を促進させるために、中日ビル様のグランドオープンに合わせて、QIRAポイントが4倍貯まるキャンペーンを打ち出しました。近隣の店舗様も中日ビル様のグランドオープンへの期待は大きなものでしたから、加盟店拡大のきっかけになったことは間違いありません。
また、同じ業種の加盟店様が似通ったキャンペーンで競合しないように、加盟店様の経営課題や事業形態に合わせ、オリジナルの特別企画を立ち上げています。
加盟店事業としては、全国展開のチェーン店と契約して一気にQIRAポイントプラス対象店を増やすという視点もありますが、JFRカードの加盟店事業は、あくまでも「地域共栄」に結びつくものでなければならないという点にこだわっています。加盟店開拓の起点は地域共栄であること、加盟店様の経営課題に寄り添うこと、これが他社の加盟店事業と大きく異なる点ではないかと思います。
「JFRカードの加盟店事業は、地域共栄に結びつくものでなければならない。顧客層のマッチングから加盟店様の課題解決まで、徹底的にこだわり抜きました」と深い思いを込めて語る佐藤さん
飯塚:ポイントアップキャンペーンや特別企画の効果を最大化する取り組みとして、QIRAポイントプラス加盟店様の露出を効果的に増やすことに力を入れました。発信媒体は主に、「メールマガジン」と、お支払い額やポイントを確認できる「QIRAアプリ」の2つです。
メールマガジンに関しては、2024年2月からオートメーション型のメール配信に取り組んでいます。これは、例えば栄の飲食店でJFRカードを使って決済をすると、そのお客様が興味を引きそうな近隣の店舗を自動でレコメンドし、メール配信するというものです。
一方、QIRAアプリでは、栄エリアを回遊されているお客様に、JFRカードのキャンペーン情報などを自動配信するシステムを構築しています。このように、プッシュ型のコミュニケーションを図るというのが、JFRカードの戦略の特徴です。
――エリア経済圏の確立のために、すべての戦略を施設や店舗という「点」ではなく、エリアという「面」で捉えているということですね。
飯塚:その通りです。お客様がどのように栄エリアで過ごすのかを想像できるようなマーケティング戦略を立て、実行しています。なお、JFRカードでは利用データを分析し、顧客の購買行動を可視化していますが、ポイントアップキャンペーンの際は、買い回りが特に進んだ印象です。
西山:中日ビルにおいても、エリアを軸としたビル開発を心がけました。近隣の商業施設とテナントが被らないよう、アパレルを避け、生活雑貨や食品、飲食を中心としたテナントで形成しています。
例えば、これまで栄エリアでお買い物をしても、外食は別エリアでしていたという方もおられると思います。そういうお客様がメールマガジンやQIRAアプリの情報をもとに、中日ビルでお食事をするようになれば、それだけ栄の経済活動に寄与できます。
――実際に加盟店になったことで、どのような手応えがありましたか。
西山:2024年に実施したQIRAポイントが倍になるキャンペーンのときにはJFRカードの利用率が明らかに増えました。一定の効果があったと評価できると思います。
「親子三世代」をターゲットに据える中日ビル。親世代は松坂屋から、若年層はPARCOからの流入を期待する
新PARCOカードで加速する「ワンチーム」での街づくり
――2025年2月19日に「新PARCOカード」の募集がスタートしました。地域共栄にどのような影響を与えるとお考えでしょうか。
佐藤:JFRカードでは、松坂屋名古屋店や名古屋PARCOと連携し、エリア全体の活性化に取り組んでいます。新PARCOカードの登場が、この取り組みを大きく飛躍させてくれるのではなかいと期待しています。
というのも、これまでのJFRカードの会員は百貨店の顧客層であったため、加盟店様が期待される顧客層に、年齢的なギャップがあるケースが多々ありました。それが新PARCOカードの登場によって、足りなかったピースがぴたりとはまり、本当の意味でエリア活性化に貢献できると考えています。
西山:名古屋PARCOといえば、若年層世代に向けた「ファッションの最先端」という位置付けですから、中日ビルがターゲットに据える「親子三世代」の一部に当てはまります。これにより、さらに相互送客を期待できるようになりました。
―― JFRグループ内の連携、JFRカードと加盟店の協力は、まさにワンチームで街づくりに挑戦する取り組みといえますね。
飯塚:そうですね。当社には決済に関わるデータが蓄積されているため、例えば中日ビルのどのお店が好まれているのかなどのデータ分析も可能です。それをもとに、加盟店様のマーケティングもお手伝いできるのではないかと考えています。
西山:そこはわれわれも欲しい情報ですから、期待しています。中日ビルにおいても、JFRカードのキャンペーン情報の発信を御社に丸投げするのではなく、加盟店サイドからも積極的に発信していきたいと考えています。2倍3倍の情報量で発信すれば、トータルで栄に来るお客様が増え、それが街の活性につながっていくはずです。
飯塚:2026年夏には、「ザ・ランドマーク名古屋栄」が開業予定です。これにより、栄エリアの街の様相も変化すると思われますが、カード会社として私たちがやるべきことは、発行するカードの特徴とお客様の特徴を捉え、それぞれのカードホルダーにしっかりとコミュニケーションをとっていくことです。
今ご契約いただいている加盟店様の販促施策も丁寧に行い、一つとして取りこぼしのないよう、一歩一歩確実に階段を登っていきたいと考えています。
佐藤:加盟店様を開拓するために街を歩き回るのですが、ザ・ランドマーク名古屋栄の開業を見据え、これまでの百貨店顧客目線、パルコ顧客目線に国内外の観光客目線が加わるなど、自分自身の街歩きの目線が変わっているのを実感しています。栄をデスティネーション(目的地)にするためのエリア経済圏を確立していきたいですね。
「一緒に地域の未来を創りたい」――夢を語り合いながら、ワンチームとして結束を深める3人
|
PROFILE
-
西山 雄一朗
中部日本ビルディング株式会社 営業グループ グループ長
中部日本ビルディング株式会社入社後、営業部に配属。旧中日ビルの運営管理業務に従事。
中日ビル建て替え事業においては、新中日ビル準備室員として旧ビルの閉館業務や新ビルの企画、ホテル企画、オフィス・商業のリーシング等新ビル開発業務全般を担当。 -
飯塚 晴彦
JFRカード株式会社 営業推進本部 エリア営業部 エリアマーケティング担当
2021年JFRカードに入社。加盟店事業開始時より加盟店マーケティングに従事、現在に至るまで数多くのカード会員向けの加盟店販促企画・コンテンツを推進。2024年には「名古屋栄周辺エリアのQIRAポイント4倍キャンペーン」を企画実施。
~今後もカード会員様・加盟店様の両方に満足いただけるよう地域共栄を体現してまいります~
-
佐藤 祥太郎
JFRカード株式会社 営業推進本部 エリア営業部 東日本エリア営業担当(加盟店開拓担当)
2024年入社。入社後一時東京エリアの加盟店開拓を担当した後、現在の名古屋エリアの加盟店開拓業務を担当。
~エリアの加盟店様へカード会員のご送客を体現して、加盟店様と一緒に栄エリアの地域共栄の実現を目指して日々活動しております~