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2024.11.22

誰もが公平に働き、共に成長できる社会を目指す。JFRクリエが実現する真のDE&Iに迫る

誰もが公平に働き、共に成長できる社会を目指す。JFRクリエが実現する真のDE&Iに迫る
個性や才能を活かしながら、一人ひとりが自分らしいキャリアを築き、幸せを実現する環境を目指しているJFRクリエ。JFRグループの一員である同社は、障がい者の働く環境に配慮をする特例子会社です。業務は「伝票管理」「進物用リボンや値札の作成」「デジタルデバイスのセットアップ」など40種類以上あり、個人の強みや個性を活かして活躍できます。すべてJFRグループを支える大切な業務で、障がい者のために設けた業務はありません。DE&Iが重視される時代、真に公平で多様な職場を目指しているJFRクリエの理念や、実際に働く人たちの思いとは。JFRグループ事業会社初の女性社長である藤原恵社長と2名の社員にお話を伺いました。

取材・執筆:後藤久美子 編集:末吉陽子 撮影:張田亜美

 

 

グループマテリアリティの「多様な人財を輝かせる」を体現し、共に企業価値を高める仲間を育てる


 

――2017年4月にJFRクリエはJFRの100%子会社として設立されました。設立の背景を伺えますか?

 

藤原恵(以下、藤原):JFRグループはかねてより「障がいの有無に関係なく、個々人が生き生きと働き能力を発揮することができる場の提供、雇用創出」を掲げてきました。2016年頃から障がい者雇用の推進という社会的意義の気運が高まり、障がい者雇用の動きが活発になりました。現在は、障害者手帳を持つ37名を含む47名の社員が働いていますが、JFRクリエの設立当時は、障がい者9名、健常者3名からスタート。健常者の9割は社内公募や自己申告でJFRクリエに集まってくれました。

 

藤原恵社長

藤原恵社長

 

――JFRクリエの役割とはどのようなものでしょうか。

 

藤原:JFRグループでは、2030年に障がい者雇用率3.0%を掲げており、その目標に貢献することが、役割の一つです。しかし、雇用率がゴールではなく、「多様な人財を輝かせる」というマテリアティの実現と、DE&Iを実現することでグループ全体の企業価値を生み出す使命も担っています。また、高槻市唯一の特例子会社として、北摂地域の雇用創出を担うことも大きなミッションです。グループの雇用促進だけでなく、DE&I、ノーマライゼーション(※)を実現することで、社会に対して大きな意義があると考えています。

 

(※)社会的マイノリティを含めた人たちに、一般市民と同じ普通(ノーマル)の生活や権利が保障される環境の整備

 

「好き」をエネルギーに。個々の強みを活かし、多様な業務で成長する職場へ


 

――JFRクリエが目指す環境、大切にしていることはどのようなことでしょうか。

 

藤原:多様な個性を輝かせるDE&Iの実現に向けて、障がい者と健常者が力を合わせて知恵を出し合うインクルーシブモデルを目指し取り組んでいます。当社は福祉施設ではなく、自立した企業です。障がい者への配慮は当然必要なのですが、その配慮の範囲が適切かどうかを大切にしています。どうしても「これは言ってもわからないのではないか」「できないのではないか」というバイアスをかけてしまいがちです。それを取り除き、目の前の個人の特性をどうやって生かすか考えることを大切にしています。

 

――具体的に社員の皆さんはどのような業務を担当されていますか?

 

藤原:グループ各社から受託した進物用リボンや値札の作成、封入作業、社内便の仕分け、清掃、スマホのセットアップなどのデジタル業務、伝票整理など、40種類以上の業務があります。これだけの業務があるということは、多様な人財を輝かせる場があるということです。これらは障がい者のための業務として新たに設置したわけではなく、もともと健常者が行っていた業務です。これは当社の大きな特徴かもしれません。

 

――業務を円滑に進めるために、どのように配慮されているのでしょうか。


藤原社長とJFRクリエ社員(左からOさん、Mさん)

藤原社長とJFRクリエ社員(左からOさん、Mさん)

 

藤原:まずは、マニュアルの整備です。曖昧な表現ではなく、明確な指示とわかりやすい図解やイラストを多用しています。また、様々な特性があり、精神的に不安定になったり体調を崩してしまったりすることもあります。一人になれるスペースの確保や、集中力の維持・過集中の緩和のために1時間に1回の5分間休憩や、1日2回のラジオ体操の時間を設けるなど工夫しています。

 

また、業務に直接結びつくわけではありませんが、「好き」を見つけて、それをエネルギーにしてほしいとの思いから、個性を輝かせるためのサポートにも注力しています。具体的には「クリエギャラリーの運営」「アビリンピック(障害者技能競技大会)への参加」「障害者雇用支援月間における絵画・写真コンテストへの応募」などです。なお、12月3日~9日の「障害者週間」にちなみ、「イロトリドリノコセイ」と題し障がいのある社員が描いたアート作品を、㈱大丸松坂屋百貨店本社ビル(木場コアビル)1階と松坂屋高槻店5階関西オフィスのエントランスに展示します。ぜひご覧ください。

 

――障がい者雇用を促進するために取り組んでいることはありますか?

 

藤原:地域の行政や支援学校、支援機関との連携を強めること。また、実習生の受け入れや見学会なども積極的に行っています。実習生を受け入れるのは、指導員やメンバー自身の成長にも繋がるという点で当社としても魅力が大きいものでもあります。外部の産業カウンセラーと入社から日の浅いメンバーとの面談も月1回行っています。

 

<コラム①Mさんインタビューより>

Mさん 目標を掲げて何事にもチャレンジ

Mさん 目標を掲げて何事にもチャレンジ

 

Mさんは母の勧めで同社を知り、高校2年時に行った実習で、作業内容や先輩のイキイキと働く姿に共感し入社しました。JFRクリエは、悩んでいることを話せて心強いところに魅力を感じているそう。1ヶ月に1度のカウンセラー面談をはじめ小さいことでも相談し、問題解決しながら成長しています。Mさんは進物用リボンや値札の作成などの作業が達成感を得るため得意。「何時までに何個」という目標を自分で掲げて挑戦しています。

 

注意深く値札の作成をする

注意深く値札の作成をする

 

印象的だったのは、実習生の指導係を2度担当したときのこと。「一気に説明するとわからない人も多いですし、早口にならないようにしていました。また苦手なことなど事前に状況を聞いています」と、様々な配慮をしながら指導していました。終わったときに「成長しましたね」と指導員に褒められたことが忘れられません。今後も、後輩や実習生にもっとわかりやすく説明できるようになりたいと語ります。

 

社内便の仕分けをするMさんとOさん

社内便の仕分けをするMさんとOさん

 

Mさんは「アビリンピックおおさか 2022」で「販売・物流アシスト競技 摂津市長賞」を受賞しました。シミュレーションを何度も繰り返し努力を重ねた結果、メンバーと受賞ができたことが嬉しかったと振り返ります。「何事もチャレンジすることは大切だと感じました」。

 

<コラム②Oさんインタビューより>

Oさん コミュニケーション好きを活かし、マニュアル更新業務も担当

Oさん コミュニケーション好きを活かし、マニュアル更新業務も担当

 

Oさんは就労移行支援事業所で紹介されたことをきっかけに同社を知り、2週間の実習、半年間の訓練を経て、2020年6月に入社。「全員が協力をし、成長ができるところが好き」だと語ります。

 

「最初は進物用リボンの形がうまく作れず、チェック時にほぼミスと判断されました。そのときに学んだコツを今は後輩に教えています」。リボンが百貨店でお客様の贈り物に使われると思うと大きなやりがいを感じ、心を込めて仕事に向き合っています。さらに、コミュニケーションを取ることが好きだと気づいたOさん。その強みを活かし、マニュアルの更新業務も担当。メンバーで話し合いながら改善を行っています。

 

心を込めてリボンを作成する

心を込めてリボンを作成する

 

Oさんは絵画が得意で、SNSでも発信。「障害者雇用支援月間における絵画・写真コンテスト 理事長奨励賞」を3回受賞しました。職場の雰囲気を描いた受賞作は普段描くアニメ風イラストとテイストが異なりますが、難しかったけれど楽しめたと微笑みます。絵を好きに描くためには、「プライベートと仕事を分けて精神状態をキープすることが大事」。

 

Oさんの描いたアニメ風イラスト

Oさんの描いたアニメ風イラスト

 

仕事のミスや失敗は引きずらないようにしているのだそうです。もっと見る人の心に刺さる絵を描きたいと、仕事もプライベートも全力で楽しんでいます。

 

「個の輝き」を引き出すために、挑戦を続けていく


 

――JFRクリエは大阪府「ハートフル企業教育貢献賞」の受賞、「障がい者サポートカンパニー優良企業」認定など、さまざまな認定・受賞実績があります。今後はどのような挑戦をしていきたいと考えていますか?

 

藤原:働きやすい職場環境を整えるのはもちろんですが、もっと個人が自分らしく輝くことができる場にしたいです。例えば、絵やイラストを描くことが好きな社員には、それを仕事につなげるサポートの提供もできると思います。

 

他にも、社員のスキル向上を支援することで、新たな業務受注の獲得など、ビジネスとしての拡大を視野に入れています。若い社員が多いので、特にデジタル分野に関しては可能性があると思っています。現在、スマートフォンの初期設定をするキッティングの業務もありますが、スマートフォンのみならずメタバースなど、もっと広げていきたいです。

 

左からOさん、藤原社長、Mさん

 

私は、常にJFRの3つの共創価値「感動共創」「地域共栄」「環境共生」への貢献を追求しています。JFRクリエは高槻市唯一の特例子会社として、地域の雇用創出に貢献しており、地域にとって欠かせない存在になりつつあると自負しています。これはまさに、「地域共栄」の一例であり、私たちの取り組みはJFRグループの企業価値向上にもつながると信じています。

 

これからも多様な人財が輝けるよう、メンバーの「好き」をエネルギーに変え、会社への貢献を実感できる企業を目指します。その先にあるのは、一人ひとりが地に足をつけて自立を感じ、輝き続ける姿です。

 

また、社会全体から「障がい者へのバイアス」を取り除き、障がいの程度や特性にかかわらず可能性を広げる世の中を目指します。その一助として、誰もが活躍できる職場づくりを通じ、JFRクリエの企業価値をさらに高めていきたいと考えています。

PROFILE

  • 藤原 恵(ふじわら めぐみ)

    藤原 恵(ふじわら めぐみ)

    同志社大学文学部卒業後、1989年株式会社大丸(当時)入社。

    大丸梅田店外商部、人事部を経て、2001年本社マーケティング担当

    2008年大丸と松坂屋統合による本社移転で東京本社へ

    2014年 本社人事部人財育成・採用担当
    2019年 本社人財開発部大丸心斎橋店担当部長を経て
    2024年3月から現職