1. TOP
  2. FRONT LINE 一覧
  3. 世界と共鳴する「感性」を創出。パルコ展覧会チームの熱量

2024.09.19

世界と共鳴する「感性」を創出。パルコ展覧会チームの熱量

世界と共鳴する「感性」を創出。パルコ展覧会チームの熱量
「感性で世界を切りさく」というパーパスを掲げるパルコ。商業施設の枠を超え、数々の斬新な展覧会を生み出してきました。なぜパルコの展覧会に人々は惹きつけられるのでしょうか。パルコの展覧会づくりの舞台裏を探るべく、企画から運営までを手掛ける、パルコ宣伝部の山﨑博史氏と那須陽友氏に企画の軸となるパーパスや、展覧会の独自性、そして未来への挑戦について、熱い想いを語っていただきました。

取材・執筆:末吉陽子 撮影:関口佳代

 

 

商業施設の枠を超えて。パルコのDNAに刻まれた「感性」で世界と向き合う


 

――パルコのパーパスである「感性で世界を切りさく」とは、具体的にどのような意味を持っているのでしょうか?

 

山﨑博史(以下、山崎):「感性で世界を切りさく」とは、私たち独自の感性を通じて新しい価値を創造し、既存の枠組みを超えて挑戦することを意味しています。パルコは商業施設としての役割を超え、アートやカルチャー、エンタテインメントなど、多様な分野で新しい価値を提供している企業です。池袋PARCOが開業してから約50年間、脈々と展覧会を自ら制作・主催してきました。この間に蓄積された感性はパルコで働く私たちのDNAに刻まれており、企画のジャッジメントにおいても重要な役割を果たしています。「これはパルコらしい展覧会か」「パルコが発信すべきものか」といった基準で判断しており、それが大きくぶれることはありません。言語化は難しいですが、長年の経験を通じて培われたこの感性こそが、展覧会を通じて世界に新たな視点を提供する起点となっています。

 

――このパーパスは、展覧会のビジョンやミッションとどのように結びついているのですか?

 

那須陽友(以下、那須):パルコはトレンドを追随するのではなく、社員一人ひとりが持つ多様な感性を尊重し、それらを展覧会の企画に反映させることで、独自性のある展示を生み出しています。型にはまらず、より自由な発想をもとに新しい価値を提供することに焦点を当てています。こうした姿勢をつらぬくことで、多くのアーティストやクリエイターからの信頼を得ていると思っています。結果、パルコの展覧会は「唯一無二」の世界を創り出しているのです。

 

PARCO MUSEUM TOKYOの写真

 

パルコの展覧会は、通常のギャラリーとは一線を画しています。会場は私たちの「感性」を世界に発信するための場です。そのため、パルコの宣伝部が企画から運営まで、ワンストップで手掛けています。テーマ選定においては独自の視点を重視しているので、パルコのDNAを理解している社員が担当する意義が、そこにあります。アーティストとの展覧会やコラボレーションを行う際に、単に売上や収益を追求するのではなく、パルコならではの新しい価値の創出を目指しています。

 

――展覧会は企画の段階が非常に重要になってくると思いますが、企画立案において特に大事にされていることは何でしょうか?

 

パルコの他部署で経験を積んだ人が集まるケースが多い宣伝部の展覧会チーム。山崎さん(中央)は「パルコらしい展覧会を実現できるのは、言語化が難しいDNAに対する共通理解があるからこそ」と話す

パルコの他部署で経験を積んだ人が集まるケースが多い宣伝部の展覧会チーム。山崎さん(中央)は「パルコらしい展覧会を実現できるのは、言語化が難しいDNAに対する共通理解があるからこそ」と話す

 

山崎:「期待外れだった」というような感想を持たれないように、アーティスト側とは密にコミュニケーションをとり、キャラクターやアニメ作品などについては徹底的に研究し周囲から多くの意見を聞きます。それは、アーティストやファンが本当に喜ぶものを提供したいという思いがあるからです。

 

例えば、私は展覧会で取り上げるアニメの映画を20回鑑賞したことがあります。ほぼセリフを覚えるくらい何度も観に行きました(笑)。その原動力はリスペクトと愛情に他なりません。

 

アーティストの個展の場合は、まずはアーティスト側の希望をじっくりとヒアリングします。パルコで展示する際に、新しいことに挑戦したいという意欲を尊重し、そのためにどのようなことをしたいのかを聞くことから始めます。こちらの要望よりも、相手側の意向を最大限尊重するようにしています。

 

展覧会の様子

 

 

売上の数字だけではない。パルコ展覧会が目指す成功のカタチ


 

――チームの運営体制についても教えてください。パルコの展覧会チームが持つ強みとは何でしょうか?

 

山崎:現在、パルコの展覧会チームは7名で構成されております。そのうち4名が展覧会の専任メンバーです。各メンバーは企画のプロデューサー兼ディレクターとして、一人のメンバーが1つの展覧会に首尾一貫して関わり、他のメンバーがサポート役として補完する形をとっています。少人数でありながらも、年間約30本の展覧会を制作しており、すべて高いクオリティを保つように努めています。みんな、強い責任感とプロ意識を持って仕事に取り組んでいますね。


また、チーム内の密なコミュニケーションが円滑な運営を支える重要な要素となっています。私たちのチームは非常に風通しが良く、各社員の感性が尊重されます。実際、若手社員が提案した新しいコンセプトが採用され、大成功を収めたケースもあるほどです。フラットな環境も特徴の一つかもしれません。

 

パルコ展覧会チーム、左からキョウさん、後藤さん、山﨑さん、後藤さん、那須さん、西川さん

パルコ展覧会チーム、左からキョウさん、後藤さん、山﨑さん、後藤さん、那須さん、西川さん

 

那須:パルコは、企画立案から精算、搬入やチャーター手配、検品、フライヤー入稿まで、すべて自分たちで行っています。

パルコのDNAを継承した展覧会を作るためには、自分たちで全てを行うことが最善だと思います。プライドもありますが、それ以上に自分たちの手で作り上げることで、より良いものが提供できると信じています。

 

商業施設がメイン事業である我々がここまで手掛けるのは珍しいかもしれません。パートナーとの間に入る代理店などに一任することもできますが、パルコではそれをやっていません。自分たちで全てを統括することで、大変なことも多いですが、その分、愛情とこだわりを持って展覧会を作り上げることができて支持される。それがパルコの強みだと考えています。

 

――パルコにとって、展覧会の成功とはどのようなものでしょうか?売上以外に重視しているポイントがあれば教えてください。

 

那須:成功は、売上や集客数だけで測っていません。話題性やブランディング向上、来場者の満足度、さらにパートナー企業からのフィードバックなど、さまざまな観点から評価しています。例えば、SNSでのバズやパブリシティの獲得数の多さも成功の一つと考えています。展覧会がSNSでどれだけ話題になり、多くの人に共有されたか、その内容を分析し、それがパルコのブランド価値向上にどれくらいつながったかなども重視しています。

 

――売上以外の成功要素を重視する背景には、どのような企業文化や価値観があるのでしょうか?

 

山崎:パルコは創業以来、文化的な価値を創造することをとても大事にしてきました。商業的な成功だけを追求するのではなく、社会や文化にとって意義のある発信を行うことが重要だと考えています。これにより、展覧会が単なるビジネスではなく、文化発信の一環としての役割を果たせるのです。

 

 

熱量高きチームで世界に挑戦。パルコの展覧会の未来


 

――たくさんの人に楽しんでもらうためには、企画・運営の段階で大変なことも多いと思います。特にどんなところが大変ですか?また、それをどのように乗り越えているのでしょうか?

 

那須:競合に対する強みという意味では、意思決定の速さも挙げられます。特にアニメ関連の企画は、タイミングを逃すとチャンスを失うことになります。版元さんにとっては、放映日などの兼ね合いで、一番盛り上がるタイミングに合わせて展覧会を開催したいものです。そのためには世間で流行ってから動き出すのでは遅いケースもあります。

 

意思決定者の感性と直感に基づいて、制作費を投資する判断を急いでくれるおかげで、メンバーは積極的に企画を提案しやすいです。また、版元さんが求めるような内容を作り上げるために、全力を尽くすメンバーが揃っています。こうした努力が、版元さんやお客様に喜んでもらえる展覧会の成功につながっていると、僕は思っています。

 

展覧会チームの強みの一つに「風通しの良さ」を挙げる那須さん。「旬が過ぎ去る前にいち早く情報をキャッチして、それを企画に落とし込んで形にするスピード感がある」と話す

展覧会チームの強みの一つに「風通しの良さ」を挙げる那須さん。「旬が過ぎ去る前にいち早く情報をキャッチして、それを企画に落とし込んで形にするスピード感がある」と話す

 

――パルコの展覧会を通じて、今後どのような新しい挑戦を考えていますか?

 

那須:これまで国内での展覧会の巡回を多く行ってきましたが、今後はグローバル展開を目指しています。パルコのブランドを国際的に広めるため、海外市場に向けた展覧会を企画し、パルコの感性を世界に伝えていきたいと考えています。また、デジタル技術を活用して、リアルとデジタルを融合させた新しい展覧会の形を模索しています。これにより、パルコの展覧会の魅力をさらに広い層に届けることができると信じています。

 

――将来的に目指している展覧会の形や方向性について、どのように考えていますか?

 

山崎:パルコの展覧会をさらに進化させ、ブランド価値を高めるためには、新しいアイデアや企画を積極的に取り入れることが必要です。既存の枠組みにとらわれない、新しい体験価値を提供する展覧会を目指していきます。

 

――パルコの展覧会を通して、社会にどのような影響を与えたいと考えていますか?

 

那須:私たちは社会に対して新しい価値観や視点を提供したいと考えています。文化発信の拠点として、アートやカルチャー、エンタテインメントを通じて社会にポジティブな影響を与えることが我々の使命です。これからも「感性で世界を切りさく」というパーパスを持ち続け、新たな挑戦を通じて社会に貢献していきたいと考えています。

 

僕はパルコらしさを発信する手段はいろいろあっていいと思っています。僕たちがメインで取り組んでいるのは展覧会で、お客様にフィジカルな体験を楽しんでもらえるものとして、それは変わらない価値があると思います。

 

ただ、その同じような楽しさを提供する方法は、展覧会というハードを使う形でもいいですし、ソフトを活用した広がり方でもいいのかな、と考えています。たとえば、海外に展覧会を持っていく場合でも、ただ物理的に持っていくのか、それともコンテンツの一部を切り取って持っていくのかなど、いろんなやり方があると思います。最近はそんなことをよく考えていますね。

※2024年8月パルコ展覧会チームへの取材記事となります。

 

展覧会の写真

 

 

 

PROFILE


 

画像

 

山﨑博史

株式会社パルコ 宣伝部 業務課長

2011年入社。熊本店・名古屋店でプロモーション業務・改装業務に従事した後、エンタテインメント事業部でコラボカフェ事業や展覧会事業を担当する。その後広島店・福岡店と異動し、プロモーション責任者としてイベント・宣伝・販促を統括する。2022年9月より宣伝部に配属となり、展覧会チームと営業企画チームを統括。

 


 

画像

 

那須陽友

株式会社パルコ 宣伝部

2013年入社。渋谷店・大津店・池袋店にて多岐に渡るプロモーション(新規イベント企画制作)及び改装ヘッドとして2022~23年春にかけての池袋店舗リニューアル改装を担当。2023年3月より宣伝部へ異動し、アートからエンタメ、アニメに至る幅広い展覧会の企画制作の他、大型動員催事のリーシング、全社波及を推進。